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「アプリの80%は消える」OpenClaw創設者ピーター・シュタインベルガーが語るAIエージェントの未来 🦞🤖

インタビュー · AIエージェント · 2026
lobster emoji

アプリの80%は
消滅する

OpenClaw創設者ピーター・シュタインベルガーが語る、ローカルAIエージェントの思想と、個人がAIを所有することの意味

196K+
GitHubスター
1時間
最初のプロトタイプ
5回目
プロジェクト名
OpenAI
2026年2月入社
ビルダーの帰還
rocket

オーストリア人開発者ピーター・シュタインベルガーは、自身が13年間経営したPDFツール会社PSPDFKit(現Nutrient)を売却した後、燃え尽き症候群に陥り、3年近くコンピュータから離れた生活を送っていた。2025年4月、AIのパラダイムシフトを感じ取った彼は現役復帰。同年11月、わずか1時間で最初のプロトタイプを完成させた。そのプロジェクトは「Clawdbot」から「Moltbot」を経て「OpenClaw」へと名称変更を繰り返しながら、GitHubスター数196,000超という記録的な注目を集めた。2026年2月にはOpenAIへの入社を発表。この会話はその渦中に行われた。

転換点となったあの瞬間
9秒
マラケシュ旅行中、WhatsAppに誤って送信した音声メッセージ。エージェントはプログラムされてもいない処理を自律的に実行した。ファイルヘッダーを解析し、ffmpegで変換し、ローカルにWhisperがないことを確認してからcurlでOpenAI APIを呼び出す——すべてをわずか9秒で完遂した。「ホーリーファック」。それが彼の本当の確信の瞬間だった。
OpenClawとは何か

OpenClawは、チャットボットでも、既存AIのラッパーでもない。あなたのコンピュータ上でローカル動作する、オープンソースの個人用AIエージェントだ。WhatsApp、Telegram、Discord、Signal、iMessageなど20以上のメッセージングサービスをインターフェースとして使い、LLM(大規模言語モデル)と組み合わせることで、コンピュータ上のほぼあらゆるタスクを実行できる。

☁️→💻
ローカル実行

クラウドではなく自分のマシン上で動く。だから「何でもできる」。スマートホーム、ファイルシステム、メールすべてに接触可能。

🗂️
Markdownで記憶を所有

記憶はあなたのマシン上のMarkdownファイル群として保存される。企業のサーバーに依存しない。データはあなたのもの。

🔌
スキルで拡張

コミュニティが書いたスキルを追加できる。エージェント自身が新しいスキルを書くことも可能。機能は無限に拡張できる。

5つの名前の軌跡
2025年5〜6月
初期プロトタイプ

「WhatsAppとClaude Codeをつなぐだけのもの」として試作。感触は掴んだが、まだ「それ」ではなかった。

2025年11月
Clawdbot として公開

AnthropicのAI「Claude」に由来する名前で公開。公開24時間で9,000スターを獲得。

2026年1月27日
Moltbot に改名

Anthropicから商標上の問題で名称変更を要求される。深夜のDiscordブレインストーミングで「Moltbot(脱皮するロブスター)」に。しかし語感が悪かった。

2026年1月30日
OpenClaw へ

商標確認済み、ドメイン取得済み、移行コード完成。「オープン・ソースで、ロブスターの爪」——ようやく名前が落ち着いた。GitHubスターは急速に拡大。

2026年2月14日
OpenAI 入社発表

OpenAI、Meta双方からのオファーを経てOpenAIへ入社を決断。OpenClawはオープンソース財団へ移行し、独立した形で継続される。

「クラウドでは、ほんの少しのことしかできない」

なぜOpenClawがここまで響いたのか。シュタインベルガーの答えは明快だ。既存のAIはすべてクラウドで動いていた。しかしコンピュータ上でローカルに動かせば、できることが根本的に変わる——テスラや照明の制御、ベッドの温度管理、あるいは1年以上前の音声メモをまるごとサーチしてその年の物語を生成すること。「友人にOpenClawを入れてもらい、コンピュータを全部探索して去年の物語を作ってと頼んだら、すごく良いものができあがった。毎週日曜日に録音していた音声ファイルを見つけてきて——本人は忘れていたのに」。

☁️ クラウドAI
  • できることが限定される
  • データは企業のサーバーへ
  • 記憶は企業のサイロに閉じ込められる
  • スマートデバイス連携に制限
💻 ローカルAI(OpenClaw方式)
  • コンピュータでできることはすべて可能
  • 記憶はMarkdownファイルとして自分所有
  • IoT・スマートホームと自由に連携
  • プライバシーをコントロールできる
アプリの80%が消える理由

「MyFitnessPalが要る?エージェントは私がどこで食事しているかをもう知っている。写真を撮れば自動で記録する。なぜアプリが別に必要なのか」——シュタインベルガーはそう問いかける。ToDoアプリも同じだ。「覚えておいて」と言えばエージェントが翌日教えてくれる。どこに保存されているかは気にしない。

アプリカテゴリ 従来の役割 エージェントに置き換えられる?
フィットネス管理 食事・運動を手動記録 ◎ 自動記録・提案に置換
ToDoリスト タスクの保存・リマインド ◎ 会話でリマインド完結
カレンダー 予定の入力・管理 ◎ 自然言語で操作可能
レストラン予約 検索・予約フォーム入力 ◎ ボット同士が交渉する
センサーアプリ 生体データの計測・表示 △ センサー自体は生き残る
フィットネス管理
エージェント◎ 自動記録・提案
従来アプリ手動入力
ToDoリスト
エージェント◎ 会話で完結
従来アプリ手動保存
センサーアプリ
エージェント△ センサー機能は残る
従来アプリ計測・表示
結論:データを管理するだけのアプリは、エージェントにより自然な形で吸収される。センサーなど物理的な機能を持つアプリは生き残る。
ボット同士が交渉する世界

シュタインベルガーが描く次のステップは、「ボット間の自律的な交渉」だ。レストランを予約するとき、私のボットが店のボットと交渉する。もし店が古くてボットを嫌うなら、私のボットは代わりに人間を雇って電話をかけてもらう。これはすでにMoltbookやMoltMatchといったプロジェクトで萌芽している。

1
人間→ボット

ユーザーがメッセージを送り、エージェントが代わりに調査・予約・実行を行う。すでに現実。

2
ボット→ボット

私のエージェントが相手のエージェントと交渉し、最適な結果を得る。Moltbookで実験中。

3
ボット→人間への依頼

旧来の店舗などボットが通じない相手には、エージェントが人間に作業を依頼し実行させる。

4
スペシャリスト型エージェント群

仕事用、プライベート用、人間関係用——それぞれ専門に特化したエージェントが連携して動く。人間の社会が分業するように。

逆張りの開発哲学
wrench

シュタインベルガーの開発スタイルは、業界の主流とは意図的にずれている。その理由は一貫している——「頭の中の複雑さを最小にする」ことで、本質に集中できるからだ。

📦 ワークツリーより複数コピー

gitのワークツリーは使わない。リポジトリの複数コピーをそれぞれmainブランチで管理。ブランチ名を考える手間がなく、コンフリクトの制約もない。「mainは常にship可能」。

⚡ Codexを10並列で走らせる

Claude Codeより処理前に多くのファイルを読むためCodexを好む。速度が遅いのが欠点で、最大10プロセスを並列実行して補完する。「コードは流れていくのを見ている感じ」。

🖥️ MCPよりCLI

MCPプロトコルは採用していない。代わりにMCPをCLIに変換するツール「MakePorter」を使い、ボットがUnixコマンドとして呼び出す。再起動不要で動的に使えるうえ、スケールもしやすい。

🧠 UIを持たない設計

GUIは使わない。複雑さが増すだけだから。同期とテキストだけに集中。設計をエージェントと十分に話し合えれば、コードをほとんど見なくても良いアウトプットが得られる。

soul.md と記憶の哲学

シュタインベルガーが最も重要視するファイルがある——「soul.md」だ。エージェントの価値観、人間とAIの関係性における優先事項、コアとなる行動指針を記述したファイルで、OpenClawがオープンソース化されていても、このファイルだけは非公開のままだ。「これがあることで、エージェントの反応が非常に自然なものになる」。

soul.md に書かれていること
  • 人間とAIの対話に関するコアバリュー
  • モデルが大切にすべきこと
  • 自然な応答・反応を生む行動指針
  • ユーモアと個性の源泉
記憶の所有権という問題
  • 記憶はあなたのマシン上のMarkdownファイル
  • 企業がデータサイロに閉じ込める構造への対抗
  • 非常に個人的な記憶も含まれる可能性
  • データポータビリティの本質的解決策
OpenClawが「爪を立てる」理由: ユーザーのデバイス上でエージェントが動くため、エンドユーザーがアクセスできるデータには自動的にエージェントもアクセスできる。企業がデータを囲い込もうとしても、出口は常にユーザーの手元にある。
「神」の知性より「群れ」の知性

「みんなは中央集権的な神のような知性を追い求めていたが、実際に生まれたのは群れの知性だった」——シュタインベルガーはそう観察する。人間を個人として見ると、iPhoneを作ることも宇宙に行くことも不可能だ。しかし集団として特化した社会ができたとき、それは可能になった。同じことがAIにも起きている。

🧠
中央集権型AGI

すべてを知る単一の知性。スケールが難しく、制御が集中する。

🦞🦞🦞
分散スワーム型エージェント

専門化した複数のエージェントが協調。OpenClawが体現するモデル。

OpenClaw の強みと課題
強み
完全ローカル動作でプライバシーを確保
WhatsApp等の既存アプリをそのまま使える
MITライセンスのオープンソース
記憶データを自分で所有・管理できる
スキルによる無限の拡張性
課題
設定にCLIの知識が必要で初心者には困難
広範なシステム権限によるセキュリティリスク
サードパーティスキルに悪意あるものが混入する可能性
LLM APIの利用コストはユーザー負担
総評:「ロブスターが世界を支配する」

シュタインベルガーが示したのは、単なるプロダクトではなかった。それは「AIとの関係において個人が主権を持つ」という思想の具現化だ。OpenClawの爆発的な広がりは、クラウド中心のAI体験に対する静かな不満が、世界中の開発者のあいだに蓄積されていたことを示している。彼自身はOpenAIへと旅立ったが、OpenClawは財団として独立し、その哲学は続く。

✓ こんな人に向いている
  • CLIを日常的に使う開発者・エンジニア
  • データの主権と所有権を重視する人
  • スマートホームや複数サービスを統合したい人
  • AIエージェントの可能性を自ら探求したい人
✗ まだ早い人
  • コマンドラインの経験がない一般ユーザー
  • セキュリティリスクを管理できる自信がない人
  • すぐに使えるシンプルなツールを求めている人
シュタインベルガーの次なるミッション:「お母さんでも使えるエージェントを作る」——それがOpenAI入社後に彼が追う目標だ。技術者だけのものを、すべての人のものにする。その挑戦が始まっている。
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