「初日から敗北は決まっていた」ジェフリー・サックスが暴く米・イスラエルのイラン戦争とホルムズ危機の深層 🌍🔥
「初日から、敗北は決まっていた」
コロンビア大学のジェフリー・サックス教授が、米国・イスラエルによるイラン爆撃とホルムズ海峡封鎖の深層、そして制御不能に陥った超大国の末路を読み解く。
サックス教授はインタビュー冒頭で現状を端的に表現した。「中東だけでなく、アフリカから西半球まで、至るところで戦争が拡大している。われわれはすでに制御不能な状態にある」と。この戦火の広がりを地域別に整理した。
- ガザ:ジェノサイドの継続
- ヨルダン川西岸:殺戮継続
- レバノン:ベイルート侵攻。「次のガザにする」と将軍が公言
- イラン:テヘランへの絨毯爆撃
- シリア・イラク・イエメン:戦闘継続
- リビア・スーダン・ソマリア:アフリカ横断的な戦乱
- ウクライナ:「1本の電話で終わらせる」は虚偽だった
- ベネズエラ:継続する戦争状態
- キューバ:政府転覆の差し迫った動き
サックス教授は「油田の物理的インフラが攻撃されているうえ、貯蔵・輸送能力が限界に達して生産が停止している。これは二重の破壊だ」と指摘する。ホルムズ海峡は世界の石油海上貿易の約20%、日本の原油輸入の90%以上が通過する。この水路が機能しなくなれば、影響は全世界に波及する。
サックス教授は現在の戦争が「完全に予測可能で、完全に防げた」と断言する。機能していた合意がいかに壊されたか、その経緯をたどる。
米・英・仏・独・露・中とイランの間でJCPOAが成立。国際原子力機関(IAEA)による厳格な監視体制が確立。イランの最高指導者ハメネイ師は「核兵器は宗教上禁じられている」と宣言していた。
IAEAが1日複数回の査察を実施。イランのJCPOAへの完全な履行が確認された。核開発を抑制するという合意の目的はまさに達成されていた。
ネタニヤフ首相の強い要請を受け、トランプ大統領は機能していた合意を破棄。サックス教授は「これがすべての元凶だ」と断じる。核開発阻止を目的に作られた合意を、核開発阻止を求める米国大統領自身が壊した。
米国がイランのカセム・ソレイマニ司令官をイラク領内で暗殺。合意破棄から暗殺まで繰り返されるエスカレーションにも、イランは核兵器開発には踏み切らなかった。
米国がイラン本土の核関連施設を初めて直接攻撃。中東情勢は新たな段階に突入した。この段階でも最高指導者ハメネイ師は核兵器取得を宗教的理由から拒否し続けていた。
米国・イスラエルが2月28日、交渉中のイランを突如攻撃しハメネイ師を殺害。その後も累積1万5000回を超える爆撃が続く。イランの革命防衛隊はホルムズ海峡を事実上封鎖。3月9日にはモジタバ・ハメネイ師(先代の息子)が新最高指導者に就任。IEAは「史上最大の石油供給混乱」を宣言。原油価格は1バレル100ドルを突破した。
サックス教授は理論上の出口を3つ示したが、いずれも深刻な障壁に直面している。
米軍基地を自国内に持つ湾岸諸国は、理論上「帰れ。安全を守ってもらっているどころか、わが国を破壊している」と言えるはずだ。
習近平・モディ・プーチン・ルーラ・ラマポーザら指導者が結束し、「気まぐれで爆撃するなど許されない」と明確に宣言する——これが最も現実的な道だとサックス教授は述べる。
米国憲法は宣戦布告の権限を議会のみに与えている。1941年12月8日、真珠湾攻撃の翌日に議会が宣戦布告したのが最後の合憲的戦争宣言だとサックス教授は指摘する。
サックス教授が最も強く批判するのは、JCPOAをめぐる論理の逆説だ。「核廃絶を求めていた大統領が、核廃絶を実現していた合意を自ら壊した」という矛盾がこの戦争の根本にある。
2016〜17年、IAEAは1日複数回の査察を実施し、イランのJCPOA完全履行を確認。最高指導者ハメネイ師は核兵器取得をイスラームの教えに反するとして明確に拒否していた。
トランプ大統領は「友人」ネタニヤフの要請に従い2018年にJCPOAを離脱。機能していた監視体制が崩壊した。サックス教授は「この合意こそ、トランプが達成しようとしていたことを正確に実現していた」と述べる。
合意破棄後、米・イスラエルはイラン指導者を暗殺し、核施設を攻撃し、テヘランを爆撃してもなおイランは核兵器開発に踏み切らなかった。最高指導者の宗教的信念がその抑止となっていたからだ。
2026年2月28日、交渉の最中にトランプとネタニヤフはまさにその「核に反対していた」最高指導者を殺害した。後継者のモジタバ師は反米保守強硬派だ。サックス教授の言葉を借りれば、「賢明とは到底言えない判断だ」。
「彼らは常に同じことを言い続けた。『簡単だ、あの指導者さえ排除すれば万事うまくいく』——いつも間違っていた」とサックス教授は断言する。ネタニヤフ氏が過去に米国議会で「フセインを倒せばイランも民主化に向かう」と約束したことも忘れてはならない。彼の見立ては一度も当たっていない。
| 地域/国 | 介入開始 | 表向きの名目 | 実際の結果 |
|---|---|---|---|
| イラク | 2003年 | フセイン打倒→民主化 | 長期内戦、国家機能崩壊 |
| リビア | 2011年 | 独裁体制排除 | 15年以上の内戦・混乱継続 |
| シリア | 2011年〜 | CIA主導の政権転覆工作 | 数十万人死亡、数百億ドル規模の破壊 |
| スーダン | 〜2020年代 | CIA・モサドによる政権転換工作 | 2つの内戦 |
| イラン | 2025〜26年 | 核開発阻止 | ホルムズ封鎖・世界経済危機(進行中) |
出口は存在する。しかしそれは軍事的勝利ではない。「トランプとネタニヤフが自分たちの引き起こしたこのデタラメを止め、帰宅するだけでいい。本当にそれだけのことだ」とサックス教授は述べる。世界全体を巻き込んだ破局を招いた者が、今や中国やNATOに助けを求めている。この倒錯した構図が、問題の根深さを示している。
- 米国外交の構造的問題を理解したい人
- 日本のエネルギー安全保障リスクを考える人
- 中東地政学と国際経済の関連を深掘りしたい人
- メディアが報じない視点を求める人
- 米国政府の公式見解に沿った分析を求める人
- イランへの軍事的対応を支持する立場の人
- 地政学的文脈よりも現在の軍事状況の速報を優先する人